2013年1月10日木曜日

占領下のプジョー、 VLV 1941 (1/43)

今回紹介しますはプジョーVLVです。 ドイツ占領下のフランスで生産された2座席の電気自動車で、一見すると3輪車ですが正確には後輪トレッドが極端に短い4輪車です。1941~45年の間に337台の生産。

あの、他社に先駆けて大胆な流線型市販車を作っていたプジョーが・・・と思うと可愛らしいスタイルも少々悲しく見えてくる、そんな歴史の証人的な一台と思います。

作りも見た目どおりの簡素な車で、左ヒンジのボンネットを開けると内は大きなバッテリー4個で占められていて、デフケース直結のモーターで後輪駆動して最高速度たった30km/hで走るという代物です。
Hachette/Norev Peugeot VLV 1941 1/43
さすがに資料となる現役当時の写真は少ないのですが、博物館等に複数が現存在してるので画像検索すると沢山出てきます(う~む。ネットの無い頃なら全部お宝画像でしたね)。


 この1/43のミニカーは、07年にフランスのミニカー付き雑誌の2誌、アシェットの【プジョー・コレクション】と、アトラスの【郵便配達車】からそれぞれのバージョンで発売され、その後ノレブから幾つかのカラーバリエーションが単品発売されたようです。

私はアシェット版を海外通販で何とか入手したのですが、付属ベース以外はノレブから出たものと全く同じで少し悔しいです(笑) 同シリーズには他にも欲しいのがあったのに選択間違えたかもしれません(苦笑)

モデル化されているのは、ドアの高さが少し高い後ろヒンジの型・・・というか普通の生産型。いや、雑誌では試作型か極初期型と思われる写真が表紙等に使われていて、一瞬そっちが普通かと勘違いしてしまいました。

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未完成 CCC Resin Model Kit Peugeot VLV 1/43
おまけ。以前買ったCCC社のレジン・キットです。ノレブよりふっくら気味であるもののコチラも特徴をよく捉えた雰囲気の良いキットでした・・・と思ったものの写真に撮ると随分違って見えますねぇ(笑)

 CCC & Norev Peugeot VLV 1/43
お尻がボートテイルで可愛い・・いや、こうして見るとボディそのものがボート型でした。

 余談

●パリ近郊の工場で細々生産されたようです。生産が45年までという事は、プジョーの主要工場であるソショー工場が43年に爆撃で壊滅した後も生産出来たという事ですね。

●運転席と助手席が少し前後にずれたタイプで、フジキャビンやマクラーレンF1(^_^;)なんかを連想します。

●シート座面が低いため、乗員は座椅子のように足を前に伸ばして座るようです。

●戦後のイセッタやハインケルも3輪風の4輪キャビンスクーターでした。ただし、3輪車が税制上有利になるイギリスでは3輪で発売されました。もしかしてプジョーVLVはドイツがイギリス占領した後に売れるような設計だった?(笑)

●プジョー・コレクション誌と、郵便配達車誌は、このVLV意外にも魅力的なモデルが有って目移りしそうでした。いや・・・郵便配達車ではベスパ・アペに浮気してVLVは買わなかったんでした(笑)


◆◆後日、動画作りました ◆◆

2013年1月8日火曜日

フランスの農民車(1/43)

一部の乗り物マニアに知られる淡路島の寄せ集めマシン「農民車」、あの手作り感あふれる車両を思わせる車がフランスにも有りました。一応こちらはメーカーによる量産車なので農民車とは一線を画しますが、ビジュアル的には近いものがあります。
名前はベネチュリエール・ムルティプレックス(って感じかな?)。

アシェット・コレクションズ社といえば日本でもお馴染みの「どっちがオマケか分からないミニカー付き雑誌」の雄ですが、これは本家フランスで09年4月に出版された「トラクターと世界の農業」80号の付録です。今現在は入手困難ですが、そのうちユニバーサル・ホビー名で単品発売されるかもしれません。私もジオラマ用にもう一台ほしいですね。期待してます。

Hachette/UH 1:43 Bénétullière Multiplex 412 (1954)

このアシェットのシリーズ、付録の模型と雑誌は一緒に企画が進む筈ですが、なぜか紙面に同型車が載っていなくて困ることが多々有ります。ディアゴスティーニのロシアの自動車シリーズなんか資料写真沢山で大満足なんですがね・・・。これも当時は同型車を紙上でもネットでも見つけられず困っていましたが、最近になってようやく存在が確認出来たというマニアック(?)な型です。

という事で、ネットで分かったのは、グリルが横ルーバーになっているコレはA型らしく、搭載エンジンはルノー・ジュバキャトル用など複数あった様子(やっぱ農民車だw)。当然ながら各種パーツもルノーやシトロエンの流用品だらけらしい。

次のB型では大きな丸グリルになるのですが、バーナードw112という農発に合わせたっぽいデザインなので専用のエンジン設定なのかもしれません。B型は比較的写真も多くてデザインも多少オシャレです。「ミニカーにするにしても、なんでモールドの冴えないルーバーグリルのA型を選んだかなぁ・・・」と現物を見てシミジミ思うのでしたw

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1/43を見て

写真を見た当初、運転席中央に太い丸パイプがあってオオ!と興奮したものです。角ばったサブフレームはあるものの、もしかしてタトラ風の鋼管バックボーン・フレームなのか?と。

しかし現物を入手して見てみると、その太いパイプは荷台の前で終わってしまい、リアアクスルまでは伸びていないのでした(なんじゃこりゃー!) 
荷台の前で鋼管が終わってる・・・

よく見るとパイプ後端に小さな出っ張りがありますが、これはスプラインシャフトなのでココから動力を取り出すようです。どうも車体後部にはPTOやヒッチといったトラクターの装備が無いので、ここら辺の仕組みがこの変な車の存在理由になるのでしょう。

その右側には上の画像のようにワイヤーロープのリールがあり、左側にはフックと滑車が中に収まる(模型では再現されていませんが)楕円形の板があるので、どうやらウインチが標準装備されているようです(↓参照)。

Hachette/UH 1:43 Bénétullière Multiplex 412
実車は行司の軍配みたいな板の中にフックが収まっている


 しかし、横向きに付いたウインチなんて何する為にあるんだ?

最初は全然分からずイロイロ考えました。調べてもズバリという回答は見つけられなかったのですが、文の中に「ボジョレー」という単語が有ったので、それをキーワードに情報をつなぎ合わせてみると分かったような気がします。

◯フランス・ワインのブドウ産地には丘陵地帯が多くて急斜面も多いらしい。
◯現在でもトラクターが土を踏み固めるのを嫌い、馬か手作業を選ぶ農家もあるらしい。
◯急斜面では馬が使えず代わりに斜面上からワイヤーで農機具を引っ張って作業するらしい。
○丘の上に集材機を思わせるウインチを置いた写真を発見。

もともと使用している農機具は馬一頭で曳く畜力用なので、この小さな車体に装備したウインチでも問題なく引っ張れるでしょう。

YouTubeでフランスのブドウ畑の作業風景を探すと、ウインチを使った作業は現在も行われているようです。また50年代の写真で、ドイツ製トラクターの側面にウインチを付けてカルチ作業をしている写真も見つけました。かなりの急斜面です。

「ムルティプレックス」とは多用途車くらいの意味合いと思われ、移動や運搬にも使える自走式ウインチといったところかと思います。

・・・とか決めつけてますが、全然違ったらどうしよう (^_^;)

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余談
 
●私が入手した物は、クレCRC5-56の匂いのするワックス?でビチョビチョでした。 パッケージを開けた形跡はないので製造時からなのでしょう。経年変化など影響は分かりませんが、とくにタイヤにツヤがあり過ぎる場合はワックスが掛かっているかもしれません。

●以前紹介した農用ジープと同様に「トラクターちゃうんちゃう?」というネタですが、コレクション雑誌以外では絶対企画が通らないであろう珍品だし、こう見えてサスペンションの無いトラクター的な足回りなので問題ないのでありました。

●残念ながら、シャシーは鋼管バックボーンフレームではありませんでしたが、前と後で違う幅のラーダーフレームが使われているという、中央でぶった切った2台の車を切り貼りしたかのような構造には少し萌えました。

●実はこのミニチュアではクラッチやミッションがどうなってるかイマイチよく分かりません(爆)

●それにしても、この助手席・・・サスペンションのない車体にトラクターシート、足は車体から突き出た「棒」に乗せるだけ、掴まる所はシートくらいしかないという・・・そこは乗りたくないですね(笑)



2013年1月5日土曜日

珍しい5台の写真

昨年後半にHDDが壊れ、それまで撮り貯めた2年分の画像がパーになりました(笑)

とまぁ、そんなこんなで例え一部でも画像が残るブログは私にとって貴重な記録になりました。そこで過去にTwitterで使った画像を幾つかコチラに残そうと思います。


スチーム・トラクターの運転台から
上富良野・土の館の蒸気トラクターです。一昨年の秋に少し動かしたそうで、その数日後に行くと屋外に展示してあり驚きました。やはり火を入れたばかりの機械には静態保存車とは似て非なる雰囲気がありますね。こうして運転台に乗って観た光景は蒸気機関車ともトラクターとも違う独特のもので、貴重な体験だったと思います。
道東で見かけた三菱ペット・レオ
おお、ペット・レオだ!見知らぬ農家のお宅の前を失礼しました。 「北海道は旧車の宝庫だ」と思われがちですが、レオは本州でレストアされた個体しか実際に見た記憶がないので、当地でも珍しい未再生車です。納屋か何処かに忘れられていたのでしょうか、わりと最近引っ張りだしたように見えますね。雨ざらしでしたが今頃どうしているでしょう。



いすゞボンネットトラック
いすゞTS系のダブルキャビン(トリプルキャビン?)のユニックで、珍しいと思います。6ライトウインドウ分の長いキャビンはなんとも言えない迫力で少し不気味に感じました。随分前にも観た記憶があるので、上川のこの地で同じオーナーがずっと所有しているのでしょうね・・・2週続けて丸瀬布の帰りに寄り、向かいのキャンプ場の食堂でカツカレー食べました(どうでもいいw)。


イワフジの集材機
軽便鉄道マニアの楽園の一つ「丸瀬布いこいの森」の外れに、コレまた森林鉄道マニアが好きそうな集材機が3台もありました。北海道らしく密閉キャビン付きで格好が良いです。キャビンは非常に狭いので実物は写真の印象より小さい筈です。3台とも2ドラム式の同サイズ機で、手前の2台はほぼ同型ですが細部ディテールに違いがあります。とても興味深いのですが、アブの襲撃で長時間の観察は無理でした (ーー;)

キャビン付きの珍ブルドーザー
北海道でもキャビンなしの古いブルドーザーは普通に有るのですが、これはアイデアで快適性アップ!暖房が効くかは分かりませんが、雪や雨、風が防げるだけで大助かりでしょう。いつもはガレージに収まっているのですが冬将軍に備えて出撃体制に入った模様。

なんとなく東南アジアやロシアあたりの魔改造車両が連想されて、あれこれウルサイ日本でもこんな発想の物を作る人がいるのだなぁと嬉しくなりました。

 (これは最近撮った画像)

2013年1月4日金曜日

ジョンディア BO リンデマン・クローラー (1/16)

個人的にはジョンディアの実車で最も魅力を感じるのはコレかもしれません。

農機具製造販売で成功していたリンデマン社が、自社でも販売していたジョンディアBOに合うクローラユニットを開発、BO型のメカニカルコンポーネントをJDから買いリンデマンの工場で組み立てて販売する形で1937-47年に1,645台が作られたようです(ただしデータは諸説あるようで曖昧)。

主に戦時中に民間向けに生産されているため日本には過去一台も存在しなかったと思われます。

SPEC CAST 1/16 John Deere BO Lindeman Crawler
スペックキャスト1/16

アメリカではトラクターの模型ジャンルをファーム・トイと言ったりしますが、随分以前、そのフォードソンF欲しさにいろいろ調べた頃に気になったのが、このスペックキャスト社の1/16モデルでした。

製品のクオリティとしては子供に与えるレベルの正しくファーム・トイですが、贅沢にもメタル・トラックこと金属キャタピラが使用されている事が珍しく思えたものです。まぁ分かってはいましたが、実際入手してみるとキャタピラ以外のディテールは見える範囲の最小限で、まるで1/87(存在しないけれど)を拡大したかのように思えました(^_^;)

という事で、特筆する内容もなく、こうして2003年に写真は撮ったものの10年もHPで触れる事なく忘れていました。が、しかし気づくとこのタイプは、間もなくしてショップの在庫が無くなり、現在に至るまで再生産は行われておらず、ざっと調べたところ現在は入手が非常に難しくなってしまったようです。

正確に言えば、バリエーションモデルである、ドーザー付き、プラウ付き、カルチベータ付きなどが限定版っぽい風情で登場したのですが、それらもやはり程なくしく消えていきました。

なお、2013年時点でこのジョンディア BO リンデマンを探すとワイドトレッド(Wide Spaced Tracks)型が売られていますが、これとて過去の例から観て市場在庫がなくなれば入手に難儀するでしょう。

ワイドトレッド型は幾つかのバリエーション・モデルとは違って余計な物の付かないプレーンな格好良さがあるので、製品の出来栄えを解った上で気になる方は押さえたほうがいいかなと思ったりしています。

 (精密・高級バージョンが出てもおかしくないアイテムだと思うんですが、全然出ませんしね)

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明けましておめでとうございます。

久しぶりの更新になりましたが、こういう短い記事も混ぜて更新を増やそうと思います。本年もよろしくお願いします。